アプリ起動時に『ユーザーアカウント制御』(UAC)が表示されて管理者権限を要求される不具合。Microsoftからも発表。AutoCADなどMSIを使用するアプリに影響。すべてのWindowsで発生。2025年8月Windows Update KB5063878などに起因
Microsoftは、日本時間で2025年8月13日以降にリリースされたWindows用セキュリティ更新プログラム以降をインストールすると、AutoCADなどで『ユーザー アカウント制御』が表示される現象が発生していることを発表しました。
不具合概要
日本時間で2025年8月13日にリリースされたWindows Update / セキュリティ更新プログラムおよびそれ以降の更新プログラムをインストールすると、特定の条件下で、標準ユーザー(管理者権限のないユーザー)に対して管理者権限を要求する『ユーザー アカウント制御』(User Account Control / UAC)が表示される場合があります。
例えば、以下のような場合に『ユーザー アカウント制御』が表示されます。
- Autodeskのアプリケーション(AutoCAD、Civil 3D、Inventor CAMなど)起動時や、初めてサインインしたあとに『.msi』ファイルをインストールする場合
- MSI修復コマンド実行時(例えば『msiexec /fu』)
- ユーザー単位で構成されるアプリケーションのインストール時
- セキュアデスクトップ(Secure Desktop)の有効化時
- etc...
その他のWindows Installer (MSI / .msi)を使用するアプリケーションにも影響する可能性があります。また、エラー1730(Error 1730)が表示される場合があります。
これは脆弱性『CVE-2025-50173』に対処するためにこのような挙動となっています。『不具合』というより、Microsoftとしては『仕様』と認識している模様です。
この不具合の影響を受けるOSおよび不具合を内包する更新プログラムは以下。
▼クライアント
- Windows11 24H2
KB5064081 (2025年8月30日公開 プレビューリリース)
KB5063878 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows11 23H2 / 22H2
KB5064080 (2025年8月27日公開 プレビューリリース)
KB5066189 (2025年8月20日公開 緊急リリース)
KB5063875 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows10 22H2 / 21H2
KB5063842 (2025年8月27日公開 プレビューリリース)
KB5066188 (2025年8月20日公開 緊急リリース)
KB5063709 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows10 1809 / Windows10 Enterprise LTSC 2019
KB5066187 (2025年8月20日公開 緊急リリース)
KB5063877 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows10 1607 / Windows10 Enterprise LTSC 2016
KB5063871 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows10 Enterprise 2015 LTSB
KB5063889 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム)
▼サーバー
- Windows Server 2025
KB5063878 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows Server 2022
KB5063880 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows Server 1809 / Windows Server 2019
KB5066187 (2025年8月20日公開 緊急リリース)
KB5063877 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows Server 2016
KB5063871 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows Server 2012 R2
KB5063950 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム) - Windows Server 2012
KB5063906 (2025年8月13日公開 セキュリティ更新プログラム)
対処方法・回避策
Microsoftは以下のいずれかで対処するよう案内しています。
- 可能であれば管理者として実行してください
- 標準ユーザーが管理者として実行できない組織や企業などの環境の場合、Known Issue Rollback (KIR / 更新プログラムをアンインストールしなくても問題の部分だけをロールバックできる機能)を使用した特別なグループポリシーをインストール・構成することでこの不具合を緩和できます。この緩和策を適用するには、Microsoftの法人向けサポートへとお問い合わせください。
Microsoftは、上記以外の回避策、関連機能の無効化(『ユーザー アカウント制御』の表示の無効化)や、その他の回避策は避けることを推奨しています。
現在、Microsoftは、IT管理者が特定のアプリに対して『ユーザー アカウント制御』が表示されないように設定できるように取り組んでいるとのこと。この改善は、今後のWindows Update / 更新プログラムにて実装が予定されています。
備考
この不具合は2025年8月下旬にAutodeskからアナウンスされていました。今回、やっとMicrosoft側からも発表されました。
Autodeskはこの不具合への一時的な対処方法として、以下のレジストリを設定するよう案内しています。
【キー】HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\Installer 【DWORD】DisableLUAInRepair 【値】1 |
おそらくほとんどの環境で、キー『Installer』やDWORD『DisableLUAInRepair』は無いと思うので、無ければ作ってください。その後、PCを再起動してください。再起動後は管理者権限を要求する画面が表示されなくなります。元に戻したい場合は『DisableLUAInRepair』を削除してください。
企業や組織などは、グループポリシー管理コンソール(GPMC)を利用してこのレジストリを組織内に展開することも提案しています。
Autodeskによると「このレジストリは、AutoCAD製品を起動した際に発生する2回目の『.msi』インストールに対してのみUACを無効にします。Windowsシステム全体のセキュリティには影響しません」とのこと。しかし、上述している通り、Microsoftはその他の回避策は避けることを推奨しています。
どのような回避策を取るかの判断はお任せいたします。