ASRockマザーボード環境でRyzen 9000シリーズが故障する原因が報じられる。透明性のあるプレスリリースの公開が望まれる [Update 1]
ASRockマザーボード環境でRyzen 9000シリーズが故障したとの報告が出ています。そしてその原因について、YouTubeチャンネルのTech YES CityがASRockから受けた説明を報じました。
更新履歴 [記事初公開部: 2025/5/29] ① 『メモリ相性の不具合』と『CPUが壊れる不具合』については別件と仮定していましたが、ASRock JAPANが「memory要因の起動できない問題とPBOの問題は記載の通り別の話」と述べたため別件と確定しました。そのため、記事から仮定という記述を削除。 [2025/5/29] [New] |
はじめに: メモリとの相性問題とはまた別件
ASRockマザーボード環境でメモリの相性問題によりRyzen 9000シリーズが起動しなくなる不具合(not 故障)はBIOS 3.20で改善したとされています。
メモリの相性問題が原因の場合は、BIOS 3.20へとアップデートすることで起動するようになります。(実際、3.20にすることで動作するようになったとの報告が出ています) こちらの件については以下の記事をご覧ください。
本題: Ryzen 9000シリーズが完全に故障する事例
本題です。本題の『Ryzen 9000シリーズが故障したとの報告』は上記メモリ相性の件とはまた別件です。(ASRock JAPANも別件と述べています。つまり、『メモリ相性で起動しない不具合』と『CPUが壊れる不具合』の2つがあるということです)
テック系YouTubeチャンネルのTech YES Cityは、友人にRyzen 9 9950Xを貸し出したものの、ASRock X870 Steel Legend環境下で使用中(映画鑑賞中の低負荷時)にCPUが壊れて動作しなくなりました。そのCPUの写真がこちら。
CPUの裏側には焦げ跡のような黒い染みがついていました。このCPUをほかのマザーボードに取り付けてみたものの動作はせず、完全に壊れていました。
似たような報告はRedditでも出ています。BIOS 3.20にしてもRyzen 9000シリーズが起動しない、他社製マザーボードでも起動せずCPUが壊れたなど。(1 / 2 / 3 / etc)
いったいなぜこのようなことが起こるのか、Tech YES CityはCOMPUTEX 2025にてASRockから話を聞くことができました。Tech YES Cityは以下のように述べています。
ASRockマザーボードとAMD Ryzen 9000シリーズの組み合わせは、CPUの故障に繋がる恐れがある。ASRockのマザーボードチームによると、この不具合は、最新BIOS (3.25)で修正されているという。 ではいったいなにが原因だったのか。ASRockによると、EDC (Electrical Design Current)とTDC (Thermal Design Current)に関係しており、PBO (Precision Boost Overdrive)のアンペア数(電流)に問題があったという。ミッドレンジレンジからハイエンドマザーボードはPBOが最大設定で動作するようになっており、初期ロットのCPUに対して、このPBO設定が高すぎたことに起因しているという。 さらにこの問題を紐解くと、冷却性能の高い水冷CPUクーラー環境が影響を受けやすい。CPUの温度が低ければ低いほどPBOの設定が上限付近まで高くなるからだ。そこでASRockが実質的に行ったことは、PBOの設定を低くして対処した。 この不具合はミッドレンジからハイエンドマザーボード(例えばB650EやX670E Taichi、B850 Steel LegendやX870など)が影響を受け、繰り返しになるが最新のBIOS 3.25にて修正されている。ローエンドマザーボード、例えばA620 HDVなどはPBO設定が意図的に低く調整されているため、この不具合の影響は受けないとされている。 また、BIOSには、ユーザーには認識できない『シャドウ電圧』(Shadow Voltages)というものが存在し、最新のBIOSアップデートではこの『シャドウ電圧』が調整された。その結果、CPUは当初よりも若干遅くなるものの、安全な状態になり、PBOの設定変更を含むこのBIOS 3.25へとアップデートすればCPUが故障することはなくなるはずだ。 Ryzen 7 9800X3Dを使用してBIOS 3.08とBIOS 3.25のパフォーマンスを比べてみたところ、Cinebench R23のスコアに変化はなかったが、ゲームに関しては若干のフレームレートの低下が見られた。BIOS 3.08では平均360 fpsだったところ、BIOS 3.25では平均346 fpsだった。 今回の不具合について、AMDとASRock、どちらに責任があるのだろうか。ASRockに尋ねたところ、ASRockは「PBO設定に関して(AMDから)一定の範囲が設けられており、その制限内で動作させていました」と述べた。私は「それなら、その上限をもっと下げるべきではないですか?」と言ったところ、ASRockは「はい、新しいPBO設定は、MSI、ASUS、Gigabyteと同等にまで下げました。ミッドレンジおよびハイエンドマザーボードのBIOSをアップデートすればこの問題はもう発生しないはずです」と述べた。 車のエンジンで例えよう。AMDは理論上最大8,000rpmで動作できると言い、ASRockは上限を8,000rpmに設定した。しかしながら、エンジンは耐えられなかった。本来なら上限を7,800rpmにするべきだった。 ASRockとAMDは良好な関係を築いている。ゆえに責任の所在を聞いても明確な回答をしなかったのだろう。 AMDのサイトにこの不具合に関するプレスリリースはない。ASRockのWebサイトにもだ。この件について、AMDとASRock、両社からきちんとしたアナウンスがされることを期待したい。 |
と、Tech YES CityはCOMPUTEX 2025でASRockから聞いた話として報じています。
Tech YES Cityの言っていることが正しければ、使用しているCPUが初期ロットのものだとBIOS 3.25にしないとCPUが壊れる可能性がある、ということになります。
この話が事実なら、AMDもASRockも、一体何が起こっているのか、多くのユーザーに伝わるよう、詳細な事実をWebサイト上でプレスリリースとして公開し、注意喚起を行うべきではないでしょうか。
もし、Tech YES Cityの報じた内容に誤りがあるのなら、正確な情報を公開していただき、ユーザーを安心させていただきたく思います。
ASRock JapanはBIOS 3.25を公開したことを2025年5月16日のYouTubeライブ配信で発表しました。しかし、そこでは、このBIOSの詳細についてハッキリとしたことは語られず「つまりどういうことかってのは察してもらえると」や「今回に関しては(BIOSバージョンを)上げた方がいい」などと言うに留められていました。
詳細を記した透明性のあるプレスリリースの公開が望まれます。
2025/5/30追記
本件の続報が入りました。PBO設定が問題とされていますが、ASRock Japanによると2025年5月30日時点では100%これが原因とは断定できない状況とのことです。詳細は以下の記事をご覧ください。
ASRock、CPUが壊れるのは自社の責任と認める。ASRockマザーボード環境でRyzen 9000シリーズが故障する件