台湾メディアがSSD障害を再現できたと報じる。Windows11 24H2環境で報告されていた不具合。ただ謎は残る [Update 1: Phisonの声明を加筆]

SSD

M.2 SSD

台湾メディアのPCDIY!が、Windows11 24H2環境で報告されているSSD障害を再現でき、その原因も判明したと報じました。ただ、謎は残ります。

更新履歴 [記事初公開日: 2025/9/7]
① 記事下部にPhisonの声明を加筆。 [2025/9/9] [New]

事の発端

2025年7月23日のプレビューリリースKB5062660や2025年8月13日のセキュリティ更新プログラムKB5063878をインストールした一部のユーザーから、数十GBの大容量の単体ファイルや、合計数十GBになる大量のファイルを連続で書き込んだ際にSSDが認識しなくなるという不具合報告が出ています。ほとんどの場合において再起動で再認識するようになりますが、そのままアクセス不能になった事例も報告されています。これらの更新プログラムをインストールしてから発生するようになったことから、不具合が発生したユーザーからはKB5062660やKB5063878が怪しいと見られていましたが、Microsoftは更新プログラムとの関連性を否定しました。

詳細やこれまでの経緯については以下の記事をご覧ください。

なお、この不具合はあくまでも一部の環境でのみ発生が報告されており、すべての環境で発生するものではありません。大規模な発生は確認できていないことから、発生条件がかなり限定的で、環境依存度が極めて高い可能性が考えられます。

本題: PCDIY!がSSD障害を再現できたとの報道

本題です。台湾メディアのPCDIY!はこのSSD障害を再現できたとして、以下のように報じています。

PCDIY!のSSD障害に関する報道

ここ最近話題になっているWindows11環境でのSSD障害の原因が判明した。

私たちは手持ちのSSDを使用して100GBおよび1TB超の大容量ファイルの書き込みテスト行ったところ、以下の障害が発生した。

  • Corsair Force Series Gen.4 PCIe MP600 2TB NVMe M.2 SSD
    • クラッシュ&故障(認識しなくなった)
  • Silicon Power US70 2TB SSD
    • クラッシュ&故障(認識しなくなった)

SSDコントローラーはMP600が『Phison PS5016-E16-32』、US70が『Phison PS5026-E26-52』を使用している。

このことを知ったPhisonは私たちに連絡を取り、4名のエンジニアが私たちのところを訪れた。Phisonは以前に自社ラボで4,500時間以上、2,200回を超えるテストを行ったが問題を再現できなかったため、私たちの検証結果に注目していた。

Phisonは同じSSDを持参し、私たちの環境でテストを行ったが、半日以上かけても再現できなかった。Phisonは私たちの故障したSSDを持ち帰って調査を行った。そして、なぜ私たちのSSDで障害が発生したのか判明した。

私たちのSSDのファームウェアは、製品として出荷される最終版のファームウェアではなく、未完成のエンジニアリングサンプル版だったのだ。これに起因して障害が発生したという。

市場に流通している製品版SSDはエンジニアリングサンプリング版ではなく、徹底的にテスト・検証された正式なファームウェアが使用されている。つまり、一般消費者は私たちが経験したようなSSD障害が発生することはない。

― PCDIY!

PCDIY!が検証に使用したSSDは、おそらくはレビュー用にメーカーから早期に提供されたもののため、ファームウェアがエンジニアリングサンプル版だった、ということでしょう。で、そのエンジニアリングサンプル版のファームウェアに起因して障害が発生したとされています。

ただ、この報道を見て「なるほどそうだったのか」と納得できる人は少ないでしょう。

X (旧Twitter)上で報告されている障害が発生したSSDはPhison製コントローラーだけに限らず、さまざまなコントローラー環境で発生が報告されています。また、X上での報告は、レビュアーではなく一般人からの報告のはずです。(つまり、エンジニアリングサンプル版ではなく製品版ファームウェア) そのため、X上の報告は、PCDIY!の報道には当てはまらない可能性が高いと考えられます。(例えば、報告者全員がレビュアーだったり、製品版ではないエンジニアリングサンプルのファームウェアだったり、なんて可能性は相当に低いでしょう。仮にそうだとしてもPhison製コントローラーを使用していないSSDでも発生する原因は不明のままです)

ただ、市場には流通していないエンジニアリングサンプル版のファームウェアではこの障害を再現できた、という1つの事実が判明したこともたしかです。

結論を言えば、1つの事実は判明したものの、「製品版SSD環境では何が原因で不具合が発生しているのか」という謎は引き続き残ったままとなります。

Update 1: Phisonの声明 [2025/9/9] [New]

本件について、海外メディアのNeowinを通じてPhisonが以下の短い声明を発表しました。

最近のPCDIY!のFacebookでの投稿を受け、弊社(Phison)はPCDIY!の担当者と連絡を取り、調査を行いました。

PCDIY!の投稿が示す通り、弊社はPCDIY!のテストに使用されたものと同じSSDで検証しました。検証の結果、PCDIY!が使用していたSSDはエンジニアリングプレビュー版のファームウェアであり、市販されているCorsair Force Series Gen.4 PCIe MP600 2TB NVMe M.2 SSDやその他のE16コントローラー搭載ドライブに採用されている最終版ファームウェアではないことが判明しました。

弊社は、市販されているSSDを用いて、同じストレステスト(100GB / 1TBの書き込み)を現地で行いましたが、故障やクラッシュは発生しませんでした。

― Phison

PCDIY!が報じた内容を、Phison側からも短く、事実のみをまとめて発表した形となります。

繰り返しになりますが、エンジニアリング版のファームウェアではSSD障害を再現できたという1つの事実は判明したものの、「製品版SSD環境では何が原因で不具合が発生しているのか」という謎は引き続き残ったままです。

また、これも繰り返しになりますが、SSD障害はあくまでも一部の環境でのみ発生が報告されており、すべての環境で発生するものではありません。大規模な発生は確認できていないことから、発生条件がかなり限定的で、環境依存度が極めて高い可能性が考えられます。

Posted by にっち